原価管理

原価管理
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原価管理の概念

コスト意識はどのように変わってきたか

顧客に商品を買ってもらうためには、その機能や性能をどこまで高めるかも大事ですが、売値をいくらにするかも大きな要因であることは、容易に理解できるでしょう。

つまり、「売値」はいまや顧客が決めるものでそれが「市場経済」というものです。

一方、企業はこの決められた売値の中で顧客の購買意欲を掻き立てるような商品を作り、なおかつ「利益」を確保して企業を存続させる必要があります。このためには設計の段階から材料を吟味し、作り方を考えて与えられた「コスト」の中でどれだけよいものを作れるか企業が一団となって努力していくことが大切です。

計画経済下での関係

計画経済の社会では※1「コスト」+「利益」=「売値」が成り立ちました。

企業は出来上がった商品のコストを計算し、これに適正な利益を加えてそれを売値としました。

つまり、企業が売値を決めていたのですね。

市場経済下(一般的)での関係

市場経済の現代では、最初に顧客が買ってくれる売値があります。

一般的には※2「売値」-「コスト」=「利益」となりました。

この売値から企業の実力によるコストを差し引いたものが利益となります。

市場経済下(企業間競争)での関係

それでも、※2の考え方にはまだ甘さがあります。

企業間の厳しい競争にさらされたときは、さらに進んで※3「売値」-「利益」=「コスト」と要求されます。

これは市場要求で決まる売値から企業存続のために必要となる利益を差し引いて残りをコストと考えます。

そして、この許されたコストの中でどれだけ顧客の要求を満たせる商品を作ることができるかが企業に課せられた使命といえます。

これらは原価企画、戦略的管理会計とも言われています。

それぞれのプロセスを見直すことによって利益を生み出して行こうという考え方です。

「ゼロ・ルックVE」や「ファースト・ルックVE」によってコスト削減を行い自社のみならずサプライヤーの協力を得て行われています。

いま、大半の企業がこうしたぎりぎりのコストを前提にしてどのように作れば目標のコストを満足させることができるか生き残りをかけてモノづくりの技術を競っているんですね。

原価管理の目的と手段

生産企業では製品を生産してこれを販売し適正な利益を得て成長発展していかなければなりません。

企業が大きく利益を得るには「売上」-「原価」=「利益」の関係から売上をできるだけ伸ばすか原価をできるだけ低く抑えるか、あるいはその両方を行わねばなりません。

単に売り上げを伸ばすということは売値は顧客が決めるものですから売上数を増やすしかありません。

これは、ややもすると人員増へと結び付き必ずしも利益とは結びづかないことが多く、賢明な方策とは言えません。

今日のような競争社会においては、製品の品質を良くすることはもちろんですが、原価を引き下げることに成功させその企業の製品の価格を安くすることが売り上げ増につながります。

また大きな利益に結び付きひいては企業を成長発展させるものなのです。

目的

この原価引き下げの実現を図る目的で組織的に遂行する管理活動が原価管理(Cost Control)といえます。

ここで管理とはある目標を設定しこの目標を実現させるために計画を立て(Plan)これを実行に移し(Do)実行が計画通りに行われているかどうかを確認し(Check)計画通りに行われていなければ正しい軌道に乗せるように処置(Action)を施し、常に目標を実現させるように実行させることです。

手段

①原価引き下げを目標とした標準原価を設定する(Plan)

②原価計算によって実際の原価発生学を把握する(Do)

③計画した標準原価と原価計算によって求められた実際の原価を対比させる(Check)

④両者に差異がある場合は、その原因を分析して対策し、次の原価計画にフィードバックする(Action)

原価管理の短期的な活動としては、①~④をサイクルを回すことで実際の原価を標準原価に近づけようとするものです。

しかし、原価管理の目的はこれだけでなくもっと広範囲に考える必要があります。

長期的には、各種の改善活動を通じて標準原価自体を切り下げていく「スパイラルアップ」の活動をしていきましょう。

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原価費目とその性質(直接原価・間接原価)

商品の原価は材料費(直接材料費)と労務費(直接加工費)だけではありません。

商品の設計技術者や原材料を購入した人の人件費(間接加工費)加工に要した設備や建物の損料(間接経費)など商品を作るために要したすべての経費が原価となります。

工場売上価格の費目とその区分

原価の区分 原価の費目
工場売上価格 製造原価 直接原価

(製造直接費)

直接材料費 原材料費

買入部品費

直接経費 燃料費、電力料

型、治工具費

直接加工費 直接賃金

法定福利費

間接原価

(製造間接費用)

間接加工費 間接賃金

法定福利費

間接材料費 消耗工具、器具、備品費

補助材料費(潤滑油、動力用燃料)

間接経費 減価償却費

燃料費

電力料

修繕費

消耗品費

賃借料

通信費

運搬費

保険料

租税公課

工場製造利益

工場売上価格は、同一企業の中で製造部門が販売部門に売り渡すときの売値ですが販売部門側から見れば仕入れ原価といえます。

一般的には毎年一回、市場価格を考慮してその商品の本年度の工場売上価格を製造側と販売側の両者で協議します。

企業によっては工場製造利益をなくして、製造原価を工場売上価格としているところもあります。

この場合は利益を出すのは販売部門側の責任で製造部門側は「工場価格に対して赤字を出さない」ということで評価されます。

直接原価と間接原価

直接原価

直接原価とは製品の製造に直接使用される費用で、製品個別に把握することのできる費用のことです。

直接原価の内、直接材料費はかかった費用の計算が比較的簡単ですが、直接加工費はいろいろな場合が考えられて算出が難しいものです。

このため一般的には、加工するための標準時間(直接作業時間)と、加工工場の1時間あたりの加工単価(直接加工費率)を、過去の実績から決めておき、これを基準にして計算します。

例えば、第一工場の前期の総発生費用(部門原価){内訳例}:人件費、設備費、建屋費、光熱費、動力費etc}が60,000千円、作業した総標準時間が60,000千円だった場合、

60,000千円/60,000千円=6,000(円/時間)

が、第一工場の時間単価(直接加工費率)となります。同様に全ての工場単価を取り決めます。

ここで商品Aは、第一工場と第二工場の二つの作業で完成するとします。作業時間と直接加工費率が下記表の場合の直接加工費は、

A部品の原価要素

工場名 第一工場 第二工場
直接作業時間(分/個) 10 6
直接加工費率(円/時間) 6,000 9,000

第一工場分は、10/60×6,000=1,000

第二工場分は、6/60×9,000=900

したがってA商品の直接加工費は合計で1,900円となります。

以上のような計算で把握しにくい小口の費用(例:ウエス、潤滑油、メトニウ、etc)は、その他の直接経費として材料費+加工費に一定の比率を掛けて加算されます。

間接原価

間接原価とは製品個別に把握することの難しい費用です。

例えば、設計技術者や人事管理を行っている部門などの費用です。この計算は殆どの場合は機種群ごとに昨年度売上高に対して発生した間接費用の比率を算出しておき、これを掛け合わせることによって計算されます。

例えばA機種群発生費用(部分原価)={①間接人件費(内訳例:A機種群の工務、技術、設計、総務etc)+②間接経費(内訳例:設備費、建屋費、光熱費、火災保険費、福利厚生費etcを按分)}=200,000千円で、A機種群の売上高=1,000,000千円とすれば、

(200,000/1,000,000)×100=20%

となり、これがA機種群の間接加工費率です。

計算の仕方は、直接原価(直接材料費+直接加工費+直接経費)に機種別加工費率を掛けて計算します。

上記の例の場合は、直接材料費300円、直接加工費1900円、直接経費50円、A商品の属する機種の機種別加工費率が20%なので、A商品の間接原価は(300+1,900+50)×0.2=450円となります。

一般的に総製造原価は、必要な部品が組み立てられて製品になった後に、全体の直接原価の合計に「1+機種別加工費率」を掛け合わせて算出されます。

したがってA商品の製造原価は(300+1,900+50)×(1+0.2)=2,700円です。

原価計算と差異分析

以上述べた話は、過去の実績からこうだったであろうと仮定した値で、実際の予算損益との間に差が生じるのは当然のこととして考えなければなりません。

では、差異の発生する主だった原因を考えてみましょう。

① 材料費差異

材料価格差異と材料消耗量差異に分けられます。価格差異は購入時の材料単価差異です。

消耗量差異は基準消耗と実際消耗量の差異です。これは歩留まりが不安定な作業では必ず発生する差異なので注意が必要です。

② 操業度差異

昨年度は作業時間が10,000時間あったものが、今年は9,500時間しかない場合500時間分の費用が回収できず、損益は対予算減となります。

この逆も考えられますが、仕事量が少ない時は、当然とはいえ対損益予算減を覚悟しなければなりません。

③ 能・効率差異

作業を完了するのに、標準時間内にできなかった場合、能率が悪いと言い、当然コストは高くなります。これは作業者の責に帰す原因です。

また材料が間に合わなかったり、作業方法が定まらず着手できなかったりなどの場合は、作業者の手空き時間が出来てしまいます。

また有給休暇や打ち合わせ、5Sタイムなども仕事ができません。これは直接時間比率(全就業時間の中に有効直接時間が幾ら有るか)と言い、間接部門や監督者の責に帰すべきものです。

この両者を掛け合わせたものを効率と言い、工場全体で対策する必要があります。

これらの解析をした後、どこがどれほど違っていたのか?何故違ったのか?を調べ、その差異の中から作業上の不具合点を探します。

これを改善することによって製品のコストを削減する、これが差異分析です。ここまで進まなければ「原価管理をしている」とは言えません。

損益計算書とは?

原価管理の内容をお話しする前に、一般的に目にすることが多い企業の経済的活動報告書の簡単な見方を勉強することから始めましょう。これらは企業が社外に対して公表するよう法律で義務付けされているものです。

これには三種類の資料があります。その中で損益計算書(P/L;プロフィット&ロス)は、貸借対照表(B/S;バランスシート)や株主資本等変動計算書(C/F;キャッシュフロー)に比べて理解しやすいので、この簡単な説明から入りましょう。

損益計算書は、文字通り事業の損益の状況を示し、事業が儲かっているか否かを明らかにする計算書です。

企業の損益は、単純には、その期のすべての収益からすべての費用を差し引けば求められます。

しかし、いろいろな段階での損益があり、それぞれに意味があるのです。損益計算書の特長は、こうした損益の計算を、次の5段階に分けて行う点にあります。

損益計算書の様式は、下のようなものです。

損益計算書の様式

売上高

売上原価

1,000

650

①売上総利益 350
販売費及び一般管理費 200
②営業利益 150
営業外収益

営業外損失

30

50

③経営利益 130
特別利益

特別損失

10

20

④税引前利益 120
法人税等 50
⑤当期純利益 70

①売上総利益

「売上」から「売上原価」(販売対象の商品・製品・サービスの原価)を差し引いたものを売上総利益といます。粗利と言った方が一般的には分かりやすいでしょう。

この売上総利益の大小は、その会社が生み出す付加価値、換言すればその会社の存在価値を表しています。

なお売上は、その会社の本業の収入を指し、それ以外の収入は別項目で処理します。次の売上原価は、卸・小売業では商品の仕入原価、製造業では製造原価が該当します。

製造原価は製造過程の費用、すなわち原材料や、工場の人件費、減価償却費などを集計して計算します。

サービス業の場合は、サービスの運営・提供に関わる人員の人件費や経費などが原価に該当します。

②営業利益

「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を差し引いたのが営業利益です。「販売費及び一般管理費」は、販売部門や本社管理部門などで発生したコストを指します。

販売費は、広告宣伝費やノベルティ費用(本社費用)がその代表です。経営活動は、製造・販売・管理などの各部門が機能してはじめて成り立ちます。

したがって営業利益は、その会社の事業活動の結果を示す、もっとも基本的な利益です。

③経常利益

「営業利益」に「営業外収益」と「営業外損失」(合わせて営業外損益)を加えたものを経常利益といいます。営業外収益は、その会社の基本的な営業活動以外から生じる収益や費用を指します。代表例は、受取利息や支払利息などの財務活動に関する損益です。

一般に財務活動がない会社は考えられず、とりわけ金利負担の大小は会社の存続にも大きな影響を与えます。その意味で、経常利益はその会社の収益力を示す代表的な指標であり、日本においては「利益=経常利益」という考え方が強くあります。

④税引前利益

「経常利益」に「特別収益」と「特別損失」を加えたものを税引前利益といいます。

特別利益・特別損失は、通常の事業活動以外から発生した収益・損失を指します。例えば、工場用地を売却した際の利益や、工場が火災に遭った際の損失などです。

特別損益は特殊な損益項目ですが、その期の損益であることには変わりはありません。そうした不定期な損益も含めた包括的な利益が、税引前利益です。

⑤当期純利益

「税引前利益」から「法人税等」を差し引いたものを当期純利益といいます。会社の利益には、法人税・住民税・事業税の税金がかかります。当期純利益が、その事業年度の損益状況を表す最終損益です。

目的に応じた原価計算

原価とは、商品作成のためにかかる費用のことで、企業のトップ・他関係者が様々な意思決定をするときの重要な指標となります。計算の仕方は幾通りかあり、場合によっては略式計算を行いますが、略式といっても決して発生する費用を無視するわけではありません。これらの方式は、製品の種類や生産形態、利用目的によって使い分ける必要があります。ここでは3種類の原価計算法を説明します。

個別原価計算と総合原価計算

これは生産形態の違いによって生ずる原価計算の方式です。

個別原価計算とは、例えば専用機を受注生産する工場のように、商品の完了時点が明確な場合に適用される方式です。作成された個々の部品原価を個別に集計して原価を算出する方法です。

総合原価計算とは、生産が継続的で原価計算上、製品の完了日を明確に決められない場合に適用される方式です。一定期間に発生した全ての費用を総生産量に配分して原価を算出する方法です。

実際原価計算と標準原価計算

予算と決算といった見方から生ずる原価計算の方式です。

実際原価計算とは、各原価要素について発生した実額を集計する方法です。

標準原価計算とは、予め設定した標準値によって算出する方法をいいます。

標準値を設定するためには、原価を算出するためのいろいろな要素ごとの標準が必要で、消費量標準、購入価格標準、作業時間標準、陳列標準、経費率標準などを定めておく必要があります。

両者を併用することもあります。

全部原価計算(フルコスト)と部分原価計算(ダイレクトコスト)

原価費目のどこまでを対象にするかといった見方から生ずる原価計算の方式です。

全部原価計算とは、製品の製作に要した費用の全てを原価として算入する方法です。財務諸表の作成、原価維持低減、経営の意思決定など、原価を総合的に眺める場合に使用されます。

部分原価計算は、直接原価計算ともいい、直接材料費のみを原価として集計し、残りの費用は期間費用として処理する方式です。売上高から購入費(変動費)を差し引いたものを原価利益と言いますが、この値はその商品がどれだけの人件費・減価償却費(固定費)を負担する能力があるかを示しています。

したがって、「どの商品の収益性が高いか?」といった問題に明確な答えが出せるので、経営の意思決定に使用されます。半面、固定費を含む全体的な総合管理に目が届かない欠点があります。

直接原価計算の例(原価利益の考え)

ある企業でA、Bの二種類の商品をそれぞれ1,000個ずつ作っているとします。商品はそれぞれ下記表のような原価構成です。

※1 原価表(現状A×1,000 B×1,000)

生産個数 原価/個 売値 利益
変動費 固定費 合計
商品A 1,000 750 280 1,030 1,000 △30
商品B 1,000 780 200 980 1,000 20
合計 2,000 1,530,000 480,000 2,010,000 2,000,000 △10,000

企業は赤字なので、社長は黒字対策を検討しました。幸いA、Bの二つの商品は設備や作業人員がほぼ共用できるので、黒字のB商品を2,000個作る試算をしました。結果は、

※2 原価試算表(B×2,000)

生産個数 原価/個 売値 利益
変動費 固定費 合計
商品A
商品B 2,000 780 240 1,020 1,000 △20
合計 2,000 1,560,000 480,000 2,040,000 2,000,000 △40,000

なんと赤字が増えてしまいました。驚いた社長は、まさかと思いながらも、念のため赤字のA商品を2,000個作る試算をしました。結果は、

※3 原価試算表(A×2,000)

生産個数 原価/個 売値 利益
変動費 固定費 合計
商品A 2,000 750 240 990 1,000 10
商品B
合計 2,000 1,500,000 480,000 1,980,000 2,000,000 20,000

みごと、黒字になりました。何故なのでしょう。表を見比べてください。

ポイントは固定費です。固定費はA製品を作ろうがB製品を作ろうが、総額は変わらないのです。

いろいろな計算のもとに、便宜上二つの商品に負担してもらっていただけです。

ただ、固定費配賦の段階でB商品の負担が少なかったので、利益があるように見えたのです。

では配賦を間違えたのかというとそうでもありません。これは商品の損益だけでは、判断のつかない事項なのです。

一方変動費は、その金額がいくらであっても、顧客が支払った金額はそのまま企業外への業者へ支払われてしまうのです。

つまり売値から企業を素通りする変動費を差し引いた限界利益(=売上高-変動費)だけが、その企業のなかに留まるのです。

限界利益の大きい商品が、より多くの固定費を負担し、余りが出るとそれが利益になるのです。

※4 原価試算表(限界利益)

生産個数 原価/個 売値 利益 限界利益
変動費 固定費 合計
商品A 1,000 750 280 1,030 1,000 △30 250
商品B 1,000 780 200 980 1,000 20 220
合計 2,000 1,530,000 480,000 2,010,000 2,000,000 △10,000

A商品はB商品より30円分限界利益が多いですね。したがって30円×1,000個=30,000円分の利益が向上するのです。つまり表※1はAの限界利益250,000とBの限界利益220,000 計470,000が480,000の固定費を負担できなかったのです。表※3はAの限界利益500,000が固定費480,000を負担してなお20,000の余力があったのです。

経営にあたって売上利益だけで商品の戦略を判断すると、間違った結論になる危険性があります。

直接原価計算から導き出される限界利益が、機種戦略に重要な役割をすることが分かります。

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設備投資と減価償却費

設備投資計算

「弘法は筆を選ばず」といいますが、ものづくりの世界では少し違います。

この格言は、弘法大師が大変字が上手だったということを言っているだけで、筆を選んでいたらもっと素晴らしいものが書けたと解釈すべきでしょう。

モノづくりには、5M2が関係しますが、この格言はそのうちの一つ「人」をいっているにすぎません。設備もまた大きな要因です。

設備投資を行う場合、大きく分けて次の4つの場合が考えられます。

また経済計算の方法もいくつかあるので、用途に見合った方法を選択することが大事です。

設備投資の必要理由

設備投資には、次の4つのケースがあります。

① 更新投資

現在ある設備を新しい設備と取り替える投資で、現在設備に比べて原価削減額がどれほど多くなるかによって判断します。

② 増産投資

仕事量の増加などに伴って、現在ある設備を拡張する投資で、利益の増加額によって判断します。

③ 開発投資

特定製品を開発するための投資で、原価の削減または利益の増加額によって判断します。

④ 戦略投資

企業の環境を整備するなどの投資で、環境優先、宣伝効果などの企業戦略によって判断します。

経済計算の方法

設備投資は企業にとって大変大きな問題で、判断を誤ると企業の存続にかかわります。

代表的ないくつかの判断方法とその計算式の概要を示します。

① 原価比較法

設備投資案の生産コストを比較する方法で、次の式で示されます。

C₁=E₁

C₂=E₂+D-K

C₁<C₂の時、旧設備が有利

C₁>C₂の時、新設備が有利

C₁=旧設備の年間実質費用

C₂=新設備の年間実質費用

E₁=旧設備の年間維持費用

E₂=新設備の年間維持費用

D=設備の減価償却費

K=旧設備の年間機会原価(売却利益)

この式の考え方は、新、旧設備で生産した場合の原価を比較する方法で、ポイントは減価償却費と機会原価にあります。

新設備を購入した場合で考えてみると旧設備は不要となり、売却して利益を得ることが可能です。

しかし一方では従来発生していた減価償却費(支出がないのに費用として原価に計上できた金額=現金が増えた分)が発生しなくなります。

したがって新設備の実質費用を計算する時は、旧設備の減価償却費が加算され、旧設備の売却費用分(機会原価)が差し引かれます。

具体例として、計算を簡単にするため、候補の新設備は現設備と同じ生産能力で、購入価格も耐用年数も同じとします。

両設備の年間維持は、下記表のようになっています。

一見したところ新設備の方が有利のように思われますが、式を使ってその優劣を比較してみます。

ここで旧設備はあと5年間原価償却費が発生し、現在の売却価格は300千円とします。

新旧設備の年間維持費用(単位千円)

費目 A1(旧設備) A2(新設備)
直接労務費 450 40
修理費・消耗品費 60 70
減価償却費 500 500
動力費 180 120
各種経費 75 85
諸税 55 70
費用合計 1,320 885

C₁=E₁=1,320

C₂=E₂+D-K=885+500-(300/5)=1,325

C₁<C₂となり旧設備のままの方が有利です。

② 資金回収期間法

投資資金の回収期間を計算して、どの投資が有利かを判断する方法で、次の式で示されます。

P=I/O

O=N+D

Pが小さいほうが有利

P=資金回収年数

I=投資額

O=キャッシュフロー

N=年間経常利益増加額

D=年間減価償却費

この考え方のポイントは設備に投資した資金を何年で回収できるかにあります。

そのため、この計算をキャッシュフロー(現金流入額)の観点から行うところです。

当然この回収年数が短いほど有利とする方法です。

減価償却費は、現金支出がないのに原価として回収することができる費用です。

言い換えればその分の現金が増えたことになります。

したがって利益と減価償却費を加えたものがキャッシュフロー(現金の流れ(増加分))です。

例えば投資額10,000千円、減価償却は定額法で5年、利益増加額を1,000千円とすれば

O=N+D=1,000+(10,000/5)=3,000

P=I/O=10,000/3,000=3.33年

この方法は計算が簡単ですが、資金の回収期間を計算しているだけで、設備投資の経済性を計算しているものではありません。

しかし複数の候補設備の比較などには便利な方法です。

キャッシュフローとは

キャッシュフローとは、現金収支ともいい、資金の流れ、もしくはその結果としての資金の増減を指します。

要するに、企業の一定期間の「現金(キャッシュ)の流れ(フロー)」のことを指し、企業活動で現金がどれだけ増減したかを知ることができるのです。

キャッシュフローとは、利益が「収益-費用」で算出されるのに対し、現金収支は「収入-支出」で算出されます。

例えば、80万円で仕入れた商品を100万円で売った場合、利益は20万円ということになります。

しかし、仕入代金の80万円は支払ったが、まだ100万円を受け取っていないとき、この間の手持ちの現金は80万円減っていることになります。

つまり、会計上は20万円の利益ですが、キャッシュフローはマイナス80万円ということになります。

キャッシュフローは、このように損益計算書などでは見えてこない現金の流れを把握することができるため、会社の実力を示す数字の一つと言えます。

キャッシュフローの分類

キャッシュフローとは、企業の資金の流れを指し、その企業の実力を示す指標の一つともいえます。

キャッシュフローの数字は、会社四季報(東洋経済新報社刊)などにも掲載されていますし、決算書にもキャッシュフロー計算書というものが必ずついています。

キャッシュフロー計算書を見ることができれば会社の状態が見えてきます。

キャッシュフローは3種類に分類されています。

1. 営業キャッシュフロー

商品やサービスの販売といった営業活動(本業)から稼ぎ出した現金。

値がマイナスであれば問題あり。

2. 投資キャッシュフロー

固定資産の取得・売却、有価証券の取得・売却など。

工場や店舗を建てるなど、将来の利益を生み出すための投資を行うため通常はマイナス。

3. 財務キャッシュフロー

借入金や社債の発行などでお金を得るとプラス。

逆に借金の返済などを行った場合はマイナスになる。

以上の3種類の合計が現金及び現金と同等物の増減額となり、これらの組み合わせにより企業の状態を見ることができます。

会計上の利益は、傾斜の裁量が入り込む余地があります。

しかし、キャッシュフローは、あくまでも資金がいくら残るか不足するかであり、裁量の入り込む余地がありません。

そのため、「企業の本当の価値は、キャッシュフローでこそ把握できる」と言ってもいいでしょう。

③ 会計法

設備投資額と年間の利益額との比率で判断する方法次の式で示されます。

R=(N/I)×100

R=投資利益率

N=年間経常利益増加額

I=投資額

前出の例で計算すればR=(N/I)×100=(1,000/10,000)×100=10%

そのほか、受け入れる収入金額が受け入れる時期によってその価値が変動することを補正し、現在の価値に直して計算する現在価値法、さらに補正の仕方を工夫した現金流入額割引法があります。

減価償却費

お金の流れと企業の利益

購入した材料で商品を作って売った場合、支払った材料代は売値として回収されます。

つまり材料代は原価として売値の中に含まれています。

では新しく製造設備を購入した場合、その費用は原価上どのように反映さるれのでしょう?

今期は5,000千円の設備を買ったから商品の原価が5,000千円出て行ったのだから、原価で回収しないと利益が5,000千円減ってしまうのではないかと考えがちですがそうでもありません。

確かに5,000千円のお金は支払いましたが企業には5,000千円の価値のある設備が残っているからです。

お金の流れと企業の利益とは別物なのです。

減価償却の仕方

土地以外の有形固定資産は、使用することにより摩耗したり旧式になったりして、やがて使えなくなる時が来ます。

毎年減っていく資産の価値を費用として原価に組み込む方法が減価償却です。

減価償却の仕方は2種類あります。

定額法

資産の使用可能期間を耐用年数と言います。

取得価格を耐用年数で割ったものをその年の減価償却費とみなす方法で建物などに適用されます。

減価償却費(1年間)= 取得価格-(残存価格)
耐用年数

これまでの残存価格は、購入価格の10%とされていましたが平成19年4月1日の法改正に伴い、一律に1円となり事実上全額を償却できるようになりました。

定率法

簿価(その年度の帳簿上の価格)に一定の比率を掛けて償却していく方法を定率法といい、設備などに適用されます。

例えば5,000千円の購入価格の設備で20%の定率償却とすれば、

1年目は 5,000×20%        =1,000千円

2年目は (5,000-1,000)×20%    =800千円

3年目は (4,000-800)×20%    =640千円

が、それぞれ減価償却費として計算されます。詳細は下記表減価償却計算表を見てください。

耐用年数

では、どのくらいの期間で償却するのでしょう。

これには税法上の何百にも細分された取り決めがありますが、その中の代表的な値を表に示します。

耐用年数の一例

設備名 耐用年数
鉄筋コンクリート事務所 50年
鉄筋コンクリート工場 38年
一般的な機械設備 10年
試験設備、測定工具 5年
実験設備 2年
木造事務所 24年
治工具 3年

なお償却率は下記表を使用します。本表は10年までですが実際の表は100年までの記載があります。

減価償却資産の償却率表

耐用年数 2 3 4 5 6 7 8 9 10
定額法の償却率 0.500 0.334 0.250 0.200 0.167 0.143 0.125 0.112 0.100
定率法の償却率 1.000 0.833 0.625 0.500 0.417 0.357 0.313 0.278 0.250
改定償却率 1.000 1.000 1.000 0.500 0.500 0.334 0.334 0.334
保証率 0.02789 0.05274 0.06249 0.05776 0.05498 0.05111 0.04731 0.04448

具体例として、取得価格1,000,000円、耐用年数10年の設備で定率法で行った場合の各年の償却額は、下記表の通りです。

8年目の調整前償却額は償却保証額を下回るので、改定償却率を使って上方修正することができます。

減価償却計算表

年数 1 2 3 4 5
期首帳簿価額 1,000,000 750,000 562,500 421,875 316,407
調整前償却額 250,000 187,500 140,625 105,468 79,101
償却保証額 44,480 44,480 44,480 44,480 44,480
改定取得価額×改定償却率
償却限度額 250,000 187,500 140,625 105,468 79,101
期末帳簿価額 750,000 562,500 421,875 316,407 237,306
年数 6 7 8 9 10
期首帳簿価額 237,306 177,980 133,485 88,902 44,319
調整前償却額 59,326 44,495 33,371 22,225 11,079
償却保証額 44,480 44,480 44,480 44,480 44,480
改定取得価額×改定償却率 44,583 44,583 (44,583)
償却限度額 59,326 44,495 44,583 44,583 44,313
期末帳簿価額 177,980 133,485 88,902 44,319 1

定率法の償却率 0.250       保証率 0.0448       改定償却率 0.334

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私が学んできたことを記事にしてみましたが、古い情報が多いのでもしかしたらいまの情報と違うかもしれません。

よかったら読んでみてください。

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